麗しの香道家は、傷心令嬢を甘く溺愛して離さない。

◇初夜



 お風呂から出た私は、リビングを素通りして寝室に向かった。のぼせたのか、緊張しているのかわからないが……とても、熱っている。


「……っ……」


 私は、婚約者がいたのにこの年で処女だ。思い出したくはないけど……あの人とはキス止まりで、中学生がするような軽い口付けだった。今思えば、あの子とシていたのかもしれないけど。

 そんなことどうでもいい。だけど、このパジャマでよかったのだろうか?下着もこれで良かったのか……結婚前に、奥さんとして先輩の郁美と一緒にパジャマやルームウェアと下着も新しく買い替えた。
 色々なことを考えていれば、浴室の場所の方からドアが開いてしまった音がした。すぐに寝衣を着ている宗一郎さんが現れた。着物だけじゃわからなかったけど、がっしりした体つきなのが服からも分かった。


「英那ちゃん、お待たせ。大丈夫?」

「あっ、は、はい……大丈夫です!」


 いやいや、全く大丈夫じゃないけれども……


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