【電子書籍化予定】麗しの香道家は、傷心令嬢を甘く溺愛して離さない。


 ニヤけながら、私は履き慣れた足袋を最初に穿いてから肌襦袢を着はじめた。その次に長襦袢を取り出して長襦袢に襟芯を通してからそれを羽織る。
 袖を通し、右前になるように襟合わせをして腰紐を締めてからシワや緩みを整えて伊達締めを体に一周させて人結びにした。

 そして訪問着を羽織って袖を通すと、左右の掛け衿を揃えて背中心を合わせた。着物を型崩れしないように着て袋帯を二重太鼓にして着付けが終了する。


「久しぶりに着物着たなぁ……意外と覚えてるもんなんだな」


 髪型も、久しぶりなのに編み込みシニヨンが綺麗にできたし。
 持ち物の確認をしていると部屋のドアがノックされてお兄ちゃんが入ってきた。


「もう準備できた?」

「うん。大丈夫だよ」

「やっぱ可愛い。この柄、英那に似合うと思ってたんだよねー」


 お兄ちゃんはそう言うと微笑んだ。今日は、郁美の家の専属運転手の方に拾ってもらってからだから……もう家から出ないといけない。

< 23 / 222 >

この作品をシェア

pagetop