麗しの香道家は、傷心令嬢を甘く溺愛して離さない。
◇茶席
よく晴れた土曜日。
私は、いつもより早く起きて新しい色留袖を眺めていた。
薄い緑色の地に式の花々が咲き乱れていて煌びやかな鳳凰が舞い飛んでいる風雅なデザインで古典的な華文が品格を持たせている。帯は金とピンクの横段に松や藤、雪輪青海波の菱文の柄が素敵で、半衿も日本刺繍の立体的に描かれている……素敵だ。
「はぁ〜可愛いなぁ。やっぱり着物は素敵だ」
乗り気ではなかったはずなのに、可愛い着物を見ると心が躍る。やっぱり生粋の呉服屋の娘なんだなとこういう時思い知らされる。
「ふふふ……もうそろそろ着ようかな〜」