【電子書籍化予定】麗しの香道家は、傷心令嬢を甘く溺愛して離さない。



「そうだ、指輪眺めてるなら母さんが手伝いなさい!って言ってたぞ。俺も暇ならそうしてほしいんだが」

「わかった、着替えていくよ」

「立派な花嫁修行はなくても、嫁に行くまでは家にいて暇なんだから……頼むわ」


 お兄ちゃんはそれだけ言って部屋を出て行った。お兄ちゃんの言うことは正論だ。私は裕福な家の娘なのに関わらず、一般家庭の普通の人と結婚するからだ。

 私は中学生くらいからずっと自由に恋愛をしたいと思っていた。だから立派な花嫁修行をしないで自分で選んだベリが丘からは往復三時間かかる大学に入学をした。大学はとても楽しかった。
 高校までとは違い、サカキの娘じゃなくてただの“榊原英那”としていられたから。

 大学生活を楽しむためにサークルは、ボランティア活動をするサークルに入った。そこでは、今まで自分がしたことにない経験ができた。

 お年寄りのいる施設にお手伝いで行ったり、子ども食堂という場所で料理を作ったり子供たちの勉強を見てあげて過ごしたり……とても楽しかった。


 それに、そこで運命の人に出会った。現在婚約している、一つ上の学年に在籍していた篠河(しのかわ)瑠樹(るき)先輩。かっこよくて優しくて、惹かれていくのに時間は掛からなかった。



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