麗しの香道家は、傷心令嬢を甘く溺愛して離さない。
◇郁美の結婚式
暑い夏が終わり、十月。
やっと気候が安定して、心地よい晴れが続いていて今日も快晴だ。
「郁美〜、お邪魔します」
「あ、英那! 来てくれてありがとう」
「ううん、呼んでくれて嬉しい。郁美の綺麗な姿も見れたし……ウェディングドレスも新鮮でかわいい」
今日は、郁美の結婚式だ。
「ありがとう。唯斗さんが、いつも和服なんだから今日くらいドレス姿みたいって言ってくれてね」
「へぇ、そうなんだ。だけど新鮮かもしれないわ」
郁美と談笑をして、控室から出るとちょうど彼女のお母様がやってきた。
「……郁美のお母様、この度はおめでとうございます」
「あら、英那さん。久しぶりね。今日来てくれてありがとう」
挨拶をして私は外に出ると皆が集まっているゲストスペースに足を運ぶ。そこでウェルカムドリンクのオレンジジュースを頂くと時間が来るまで待つ。
すると数分で教会まで案内された。
都心にある教会なのに心地よい緑を感じさせる会場で自然光が降り注ぐ緑に満ちたチャペルは非日常的な空間だった……まぁ、本当に非日常なのだけど。