【電子書籍化予定】麗しの香道家は、傷心令嬢を甘く溺愛して離さない。
明後日なんてすぐで、もう当日。
「……私、レジ締めしていきますね!」
「ありがとう、英那ちゃん」
遅番同士の小夜さんにそう言って、いつもやっているようにレジ締めをする。まだまだレジを最新版にはしていないので、まず今日一日の売り上げのレシートを出してレジに残っている小銭やお札の確認をして……と面倒な作業をしてレジ締めを完了させた。
「英那ちゃん、お義父さんと食事に行くんでしょ? 支度あるだろうし、先に上がりな」
「あ、うん。ありがとう、小夜さん。お言葉に甘えてそうします」
「うん、気をつけてね。食事、楽しんでね」
小夜さんの言葉に甘えて私は退勤ボタンを押すと、私はお店を出て居住スペースのある家に向かう。家に入ると「あ、おかえり」とお母さんに声を掛けられて私も「ただいま」と返す。
「お父さん、待ってるわよ。早く着替えて降りてきなさいね」
「はーい、すぐに着替えてきます」
「えぇ」
私は家の二階にある自分の部屋に入ると、今着ている仕事用の着物を脱いでお出かけ用の着物に着替える。
これは、卒業祝いでお父さんにもらった着物で、ほんのりピンク色を帯びた薄紫色に手刺繍で施された柄は牡丹や薔薇、カトレアなどの花柄で上品な代物だ。手入れはしていたものの、傷んでもいないし大丈夫そうだ。