偽恋人の恋愛事情


昼休み


3組の教室の前まで来たは良いものの

なぜか…謎に緊張している

こんな風に誰かに会いに来たことなどない


でもありがたいことに昼休みなのでガヤガヤしているし人の出入りも激しい

…何気なくだ

さらっと、すっと、ほほーいと済ませれば良い


よし、よし行くぞ…

ふー


「あれ?会長だ」

へ?

聞き覚えのあるような、ないような声に呼ばれてビクッと肩を震わす


「どしたの?」

え…あ

この人は

生徒会会議に参加していた議員の人だ

まじめ揃いの議員の中で、どういう手違いで入ったのかわからないけど

場にそぐわないチャラけた雰囲気のやつ


「何してんの?」

「あ、いや…人を、探してまして」

「3組?呼んできてやろうか?」

えっいいの?
そんな技があるの?

「お、お願いします!」


「おけー!で、誰?」

え?あ、ああ

「鈴本くんを」

そうか、言わなきゃね


「鈴本?鈴本って楓?」

「はい」

「えー何々?まさか会長まであいつに告るつもり?」

は?

少し屈んで私の顔を至近距離で覗き込むその男



チャラ議員は人より明るめの髪をしていて、少し伸びた前髪を女物の花のついたピンで止めている

おそらくこいつも世間一般で言うイケメンの部類だろうが、今はひどくうざったい

長いまつ毛のかかるその目が怪しげに私を見ている


「あんな奴より俺のが良いよ〜?」

はぁ?

頭の中にも花が咲いてるのか?

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