僕の欲しい君の薬指


妖しく細められる目と、艶やかに緩められる唇。瞬きをして硬直する私の下唇を指環が嵌められている左手薬指で可愛がりながら、天糸君はふふふっと声を躍らせた。



「僕達は永遠に愛し合う関係なんだから、こういう質問をする正当な権利が僕にはあるに決まっているでしょう?そして月弓ちゃんは僕に応える義務があるんだよ?」


“流石の僕でも、これ以上月弓ちゃんがふざけた事を云う様なら口を塞いでここに監禁するからね”



私の言動次第で、きっとこの子はいとも簡単に暴走してしまうのだろう。その確信があるからこそ、この子が恐い。


自らがどれだけ猟奇的な発言をしているのか分かっていないのか、それとも、分かっていてこんなにも美しく微笑んでいるのか。それすら判然とできずに震える私の唇に、天糸君は慣れた様に自分の唇を重ねて開口した。



「月弓ちゃんはどうやったって逃げられないよ」



そんな事くらい、分かってるよ。


心中に浮いたその台詞を呑み込んだ私の胸が、張り裂けそうなまでに痛かった。



< 127 / 259 >

この作品をシェア

pagetop