僕の欲しい君の薬指



「やめてよ、天糸君」

「やーだ」

「ふざけないで」

「ふざけてないよ」

「…こんなの、やめてよ」

「こんなのってどんなの?ねぇ、口で説明してくれないと分からないよ月弓“お姉ちゃん”」

「やめてったら!!!」



相手を突き放したくて胸板を押し返してみてもびくともしない。触れた胸板には華奢な見た目とは裏腹にしっかりとした筋肉の感触が確認できる。破廉恥な行為に対する羞恥心。それから必要以上に触れ合っている事への背徳感。複雑に様々な感情が錯綜して何だか無性に泣きたくなってしまった。



「天糸君、私怒るよ」

「そんな風に睨まれたら、僕寂しくなっちゃう」



大きな瞳を潤ませて肩を落として私から離れる彼に安堵の息が漏れる。明らかにしゅんとしている相手を見て途端に少し強く言い過ぎてしまったかもしれないと思い反省した刹那だった。



「でもね、月弓ちゃん」



私の毛束をそっと掬った彼の手が露出した私の耳の輪郭をなぞった後、妖しく頬を緩めて目尻を下げた。


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