僕の欲しい君の薬指




「お前こそ月弓ちゃんって何なの?月弓とどういう関係な訳?」

「珠々は僕のお話が聞こえないの?まずは僕の質問に答えてよ」

「痛ぇんだけど」

「うるさい、さっさと答えろ」



今にも榛名さんを殴ってしまいそうな彼に、いよいよ頭は真っ白になった。仲裁に入るべきなのだろうけれど、まるで足が地面に縫い付けられたみたいに固くなっていてる。

どれくらいの沈黙が続いたのだろうか。数秒と云われればそれくらいの気もするし、数分と云われればそれにも頷ける程、自分の置かれている環境のせいで感覚は狂っていた。


本息で彼が榛名さんを殺めてしまうのではないか。そんな不安が胸中で浮く。翡翠色の双眸からは輝きが消えていて、彼の鋭利な視線が恐ろしい。

憤慨している彼の貌は異常に険しく、激しい嫌悪感と強烈な不快感が滲んでいた。だからこそ、それ等の感情を一瞬で消し去ってゆるりと狂気的な笑みをぶら下げた彼に、足は更に竦んだ。



「ふふっ、あはは、あはははは、あーあ、成る程そういう事か」



最初に重苦しい沈黙を切り裂いたのは質問を投げられていた榛名さんではなく、狂った様な笑い声を上げた彼だった。


< 157 / 305 >

この作品をシェア

pagetop