僕の欲しい君の薬指

。。。2




ボロボロと大粒の雫が翡翠色の双眸を潤ませ、それがやがて私の手に滑り落ちて、指の先まで見事に深紅色に塗り潰している血を洗い流す。一粒、また一粒、更にもう一粒。手の甲に降り注ぐそれは、大変に熱かった。



「……言って」

「ん?」

「もう一回…言って。…っっ…お願い月弓ちゃん、もう一回言って?」



頬に置かれた私の手にそっと自らの手を重ねて頬をスリスリと寄せる彼が、心から歓喜して酷く高揚しているのが手に取るように伝わる。可愛い天糸君。三年違いで私の元に舞い降りてくれた私だけの天使君。


演技力を高く評価されてあっさりと新人賞を受賞してしまった彼が出演したドラマも映画も全て鑑賞した。幾つかの作品の中で泣くお芝居を披露した彼の姿に、世間は彼の虜になったけれど、これだけははっきりと断言できる。



今、私の視界を独占している彼の()き貌以上に美しい彼の泣き貌なんて存在しない。彼の見せたどのお芝居よりもずっと、目前にいる生身の彼の方が雅で妖艶だ。


ゆるりと唇で三日月を描いた私は、相手の頬を指の腹で愛撫しながら囁いた。



「天糸君を愛してるよ、狂おしい程に愛してるの」



瞳を閉じて、相手の唇に己の唇を重ねる。自分から積極的に接吻(くちづけ)をするのは初めての事で、心臓はバクバクと興奮と悦びの鐘を鳴らしていた。



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