僕の欲しい君の薬指


貴方の方が。天糸君の方が何十倍も罪深き人だ。



「好き」

「駄目」

「大好き」

「駄目」

「愛してる」

「駄目!!!駄目だよ天糸君、これ以上はもう何も言わないで」



口を突いて出た弱々しい自分の声を彼は聴いているはずなのに、にこにこしているままだ。それがとても恐い。どうしてこんなにも嬉々としているのか私には理解ができなくて困惑する。


涙を落とす事にしか能のない私にも辟易する。胃がムカムカして吐き気も覚えた。視界に映る天井と彼の貌が、涙でぼやけている。そんな中でも、彼が幸せそうに目を蕩けさせているのだけは分かった。



「愛してるよ。何度だって囁いてあげるね。月弓ちゃんの脳が僕の色に染まるまでずっとずっと唱えてあげる」



一本。また一本。更にもう一本。親指からゆっくり私の指を絡め取って恋人繋ぎをした彼の手を振り解きたいのに決して叶わない。ただただ己が無力なのだとまたも痛感させられるのみ。



「こうしていると、愛し合っている恋人みたいだね。とても素敵。恋人がする“行為”を、このまま続けようね」



悍ましい宣告を私に突き付けた彼は、私の胸の露出を抑えていた下着に手を掛けて隠れていた素肌を裸にさせた。


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