『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす

岡本は頭のキレる女だ。

大勢いる女子社員の中でも目を惹くほどの美貌の持ち主。
この俺が社内で信用している女子社員は、芽依とこの岡本くらいだろう。

俺に色目を使わず、仕事も完璧にこなす。
父親である社長の信頼も厚い。

「以前より、副社長への関心が高い特定の女子社員がいるのですが、半年ほど前からでしょうか?副社長の如月さんへの対応と言いますか、当たりが柔らかくなったこともあり、その社員たちの矛先が彼女に向いたように思います」
「俺への執着が、如月へと向いたということか」
「はい。如月さんには注意するようにお伝えしておいたのですが、こればかりは私でも防ぎようがなく」
「事情は分かった」
「先日、彼女のロッカーを漁ってるところをたまたま見かけまして、もしかしたら、他にも余罪はあるかと思いますが、十分気を付けた方が宜しいかと」
「ん」
「それと、キサラギからの密偵社員がいます」
「それは知ってる」
「社長より、如月さんに被害が被らないように配慮するように申し付かっておりますので」
「……親父がか?」
「私の方で、原因を探ってみます」
「俺の方も、カードを揃えておく」
「では、……失礼致します」

岡本は丁寧にお辞儀し、部屋を後にした。

俺だけならともかくとして、芽依に手を出すとか……許せねぇ。
俺が今まで黙って優しく振る舞ってたから図に乗りやがって。
くそっ……。



「じっと座ってて」
「大丈夫ですよ、大した怪我ではないので」
「いいから座ってて」

帰宅した途端に芽依は夕食を作ろうとする。
本当に自分のことをすぐに二の次にするんだから。

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