『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす



井上の運転する車で、自宅マンションへと芽依を連れ帰った。

「何か温かいものでも飲むか?」
「……はい」

彼女がよく飲んでいるジャスミンティーを淹れる。

「ありがとうございます」

岡本が寄こしたUSBの中に、うちの会社に潜んでる伏兵と堂々と会社の一階にあるカフェで落ち合う鮫島の姿も捉えていた。
そいつと結託して、彼女の両親から指示され、怪我を負った芽依を襲ってでも孕ませようとしたのだと。

「芽依」
「……はい」
「今日から、ここで生活しろ」
「へ?」
「もうあのマンションへは戻るな。ってか、戻らせねぇ」
「っ……」
「っつーか、お前の両親イカれてんだろっ!自分の娘を強姦させる男を送り込むって……マジありえねぇ」
「……ごめんなさいっ」
「お前が謝ることじゃない」
「……」
「芽依に、……もしものことがあった、正気じゃいられねぇ」
「っ……」
「もう俺の傍から離れんな、……分かったか?」
「っ……はい」

ぎゅっと抱き締めてるのに安心できない。
また別の男があてがわれるんじゃないかと。

「これ以上は待てない。……ケリつけないとな」
「………?」
「最悪、親子の縁を切るみたいな感じになるかもだけど、それでもいいか?」
「……はい」
「ってか、結婚すれば、戸籍も別になるし、関係ないか」
「……はい」
「うちの親父が、芽依の両親の分も可愛がってくれるはず」
「フフッ、……だといいですけど」
「言ったな」
「へ?」
「今の、プロポーズを快諾したと見做すぞ」
「っ……」

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