『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす



最近、芽依の様子がおかしい。
寝つきも悪いようだし、毎日疲労感が表情から窺える。
どこか、体調が悪いのだろうか?
それに、視線も合い辛くなったし、何より触れようとするとパッと距離を取られてしまう。

少しずつ距離が縮まって来たと思っていたのに。
お互いに気持ちも打ち明けて、未来を約束したはずなのに。

もしかして、岡本との関係を勘違いしてるのか?
最近、頻繁に部屋に呼んだりしたから勘違いさせてしまったのかもしれない。

「芽依」
「就業中です」
「……如月」
「はい、何でしょう」

相変わらず、仕事とプライベートをはっきりと区別している。

「あまり顔色もよくないし、早めに帰っていいぞ」

十五時からの役員会に出席するため会議室へと向かおうとした、その時。

「っ……、ごめん」
「会社では、このようなスキンシップはお控え下さい」

頭を優しく一撫でしたら、パシッとその手を払われてしまった。

「会議に遅れます」

少し前のロボット秘書に完全に戻ってしまった。
俺、何かしたっけ?

俺の手を振り払ったその表情は、完全に心を閉ざしてた頃の彼女だ。



十六時半過ぎに会議を終え、他の役員達が退席した会議室で、入口の壁際に立つ彼女を壁に張り付けた。

「これは、何の真似ですか?」
「俺の目を見ろ」
「勤務中に要らぬことに気を回されませんように」
「いいから、見ろ」

俺だってこんな事をいちいちしたくねぇよ。
仕方なさそうに視線を持ち上げた芽依は、心を読み解かれないように冷視線を向けて来た。

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