『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす

「ごめんなさい、話がいまいち理解出来なくて」
「だから、婚姻届はさっき受理されて、俺らもう夫婦なんだよ」
「うそっ」
「いや、ホント」

苦笑した彼は、ぎゅっと手に力を込めた。

「あ、そうだ。これ見たら納得するよ」

そう言って見せられたのは、婚姻届受理証明書。
今日の日付と私達の名前などがしっかりと記されている。

「本当なんですか?!」
「だから、さっきさからそう言ってるじゃん」
「っ……」

どういうこと?
岡本さんはどうなったの??

「岡本さんは?」
「岡本?」
「はい。……少し前に資料室で偶々居合わせて二人の話を聞いてしまったんですけど」
「聞いたって、何を?」
「響さんと岡本さんがご結婚なさるって」
「え、……何それ。俺と岡本が?」
「はい、響さんがご自分で仰ってましたよ?」
「は?」
「“俺らの結婚は、どんな手を使ってでも必ずする”って」
「……俺らの結婚って、俺と芽依の結婚だけど?」
「………え?」

首を傾げる彼。
私もつられて首を傾げる。

「しかも、“手段は択ばない”って」
「……うん、だから、こうして手段を択ばず、一方的に婚姻届を出して来たけど」
「…………えぇ~ッ?!」
「フフッ、芽依可愛いっ、勘違いだよ」
「え、でも、えっ、……えぇ~っっっっ」
「もしかして、それで急に距離を取ろうとしてたのか?」
「………はい」
「でもじゃあ、昨日のは何で?」
「あれは………」
「あれは?」
「………今日のパーティーが終わったら、響さんの前から姿を消そうと思って」
「はぁ~?!」
「最後に想い出でも作ろうかと……」
「意味わかんねぇ」

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