『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす

盛大な溜息と共に髪をくしゃくしゃに掻き乱す彼。

「いや、マジであっぶねぇ~~っ」

両手で顔を覆い隠し、終わりの尽きない溜息を漏らし続けてる。
そんな彼にそっと呟く。

「本当に私でいいんですか?世の中には岡本さんみたいな綺麗な女性が沢山いますよ?」
「はぁ?それ、マジで言ってんの?」
「……はい」
「いや、俺の目には芽依が一番綺麗に見えてんだけど」
「っ……」
「綺麗だし可愛いし、他の女なんて八年前から眼中に入ってないし」
「っっ……」
「二時間くらい前にプロポーズしたよね、俺」
「………はい」
「それでも、そんなこと言ってんの?俺、キレるよ?」
「………」

彼は呆れ返って真顔になった。

「でも、本当に……結婚したら、もう他の女性の所に行けなくなりますよ?」
「キレんぞ」
「私、相当強欲なので、……浮気を許せるほど寛容ではないですから」
「強欲で上等。俺は芽依よりもっともっと嫉妬深いし、えげつな~く強欲だから」
「っ……」
「もう……どこにも行けないように、しっかり捕まえとけ」
「っ……、はいっ!」

自然と絡み合う視線。
さっきまでの刺々しさはなく、お互いに求めあう熱い視線だ。

どちらかともなく求めるように重なる唇。
もう誰の目も気にせず、思うままにできる倖せを噛み締めて。

「んッ!!」

彼のスマホがブブブッっと震えた。

「はい、……あ、すぐ戻る」

スマホをジャケットに戻した彼が、チュッと軽く唇を奪った。

「親父が戻って来いって」
「っ……はい」
「行こうか」
「はい」

差し出された彼の手。
その手にそっと左手を乗せた。
そこには、眩いほどに輝く指輪が。

十年前に芽吹いた初恋が、今日漸く実りました。


~FIN~

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