『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
まさかまさかの返答が。
この顔が好みじゃないって……。
何それ、……それじゃあ、望みなんて無いに等しいじゃん。
結婚したら、毎日見る顔なのに。
この顔が嫌いと言われたら……マジで立ち直れそうにない。
「ごめん、帰りはタクシーでいい?」
「はい?……あ、はい、それは構いませんけど」
羞恥心をどうにかしたい。
今まで散々女にちやほやされて来た分、結構整った顔だと思い込んでたけど。
いやはや……、まさか、好きな女にこの顔が原因だと言われたら、返す言葉が見つからない。
冷蔵庫から缶ビールを取り出し、それをキッチンでグビグビと飲む。
素面じゃまともに見れねぇっての。
ってか、嫌いだと言われても、嫌いにはなれないのが悔しい。
めちゃくちゃ好きすぎて、嫌いだと言われても諦めきれないのに……。
もう一缶も手にして、ダイニングに戻る。
「ごめんなさい……」
「謝らなくていいから」
「ですが……」
「結婚は置いておくとして、付き合うのも嫌?」
「え?」
「だから、俺を彼氏にするのも嫌か?」
「………そうですね」
「顔だけ?」
「へ?」
「他には?」
「………」
もうここまで来たら、これ以上へこむものは何もない。
一%でも確率が上がるなら、直せる所は直して可能性を伸ばしたい。
「どうして私なんですか?」
「それ、この前にも言っただろ。一目惚れだって」
「でも、私みたいな女性なら、沢山いると思いますけど」
「散々遊び尽くして来たの、傍で見てただろ」
「………」
「それでも芽依以外にいなかった、これが俺の答えだ」
「っ……」