うた×バト〜思いは歌声にのせて〜

気になるうさぎの子【雄翔side】

「名前くらい教えてくれても……」

 大きな帽子から垂れたうさぎ耳を見送りながら、俺はちょっと不満を呟いた。
 でもすぐに気を取り直す。

「まあ、同じ新入生っぽかったしまた会えるよな」

 あの大きな帽子は目につくだろうし。

 この星彩学園はスターの育成って名目があるからか、制服さえちゃんと着ていればどんなオシャレをしても許されるらしい。
 髪を染めるのはもちろん、ピアスや化粧もOKだって聞いた。

 だからあんな帽子もOKなんだろうな。

 でもまさか歌が聞こえて目が覚めたらうさぎがいるとは思わなかった。
 一瞬まだ夢でも見てるのかと思ったし。

「フッ……」

 思い出してつい笑うと、ピロロンと俺のスマホが鳴った。

 取り出してみると青いヘビのキャラクターが画面に出てアラームを鳴らしてる。
 俺の“うたアニ”のリュウだ。

「っと、俺もみんなと合流しないと」

 最近寝覚めが悪くて寝不足気味だから、場所を変えて仮眠をとってたんだ。
 寝過ごした場合も考えて学園敷地内の丁度いい場所を探してたらここを見つけた。

 人目も避けられるし、良い場所を見つけたなって思う。
 今のところこの場所を知ってるのは俺とさっきのうさぎの子だけだろうから、これからも一人になりたいときとか使えるかも。

 俺は植え込みを通り抜けながら陽向にどこで合流すればいいかメッセージを送る。
 返事を待ちながら東屋の方を振り返って、ふと思った。

「そういえば、さっきは気分よく起きられたな……?」

 最近悪夢ばっかり見てたのに、と。
< 12 / 181 >

この作品をシェア

pagetop