うた×バト〜思いは歌声にのせて〜
「な、教えて?」
「~~~っ!」

 少し顔を近づけられて、男の子らしい低い声も近くなる。
 その声はやっぱり楽しそうで、からかわれてるんじゃないかって思った。

「雄翔くん……いじわるしないでよぉ……」
「……」

 心臓は早すぎるってくらいドキドキするし、顔は手のひらじゃあ隠しきれないほど真っ赤になるし。
 それでも正直に言うわけにはいかなくて涙がにじんできちゃう。

 そんな状態で雄翔くんを見上げると、いじわるそうだった顔からスンッと感情が抜け落ちた。

「え?」

 どうしたの? と聞く前に雄翔くんは自分のひざにひじをついてうなだれる。

「……やばい、なにこれかわいすぎ……心臓痛い」
「え? なに?」

 声は聞こえたけれど、下を向いてるせいかちょっとよく聞こえなかった。
 また『かわいい』って言われたのだけは分かったけれど。

「雄翔くん?」

 私の呼びかけに、雄翔くんはゆっくり体を起こした。
 そうして見えた顔は少し複雑そう。

「いや、なんでもない。からかってごめんな?」
「え? あ、うん……」

 ちょっといじわるだった雄翔くんの変化に首を傾げる。
 不思議だけど、いじわるじゃなくなったからいいのかな?

 ……でも、いじわるな雄翔くんにもちょっとドキドキしちゃった。

 普段見ない雄翔くんの様子にちょっとギャップ萌えしたのかもしれない。
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