うた×バト〜思いは歌声にのせて〜
「ぷはっ、藤子遠慮なさ過ぎ」
「本当に言いたいこと全部言ったね」

 藤子ちゃんの裏のなさに千代ちゃんと千絵ちゃんは思わず吹き出す。
 私もつい「ふふっ」て笑っちゃって、明るい雰囲気になった。

「そうだね、ちゃんと伝えないとわだかまりになっちゃうもんね」

 なにか吹っ切れた様子の千代ちゃん。
 千絵ちゃんと二人で顔を見合わせてから、正直に気持ちを話してくれた。

「私たちは双子で音楽の世界にいたいの。作詞家と作曲家として」
「だから私たちも藤子と同じ気持ちだよ。優勝目指して欲しいって思ってるけど、無理はしてほしくない」

 二人の本音も聞いて、受け止める。

「そっか、私はみんなの夢も背負ってるんだね」

 責任重大だ、と思っていたら千代ちゃんが慌てて付け加えた。

「あ! 負担には思わないでね? 誰かがミスしたり無理だって思うことがあったら、責めるんじゃなくてフォローするのがチームなんだから」

 千絵ちゃんと藤子ちゃんもうんうんってうなずいてる。
 本当に良いチームメートに恵まれたなぁって思う。
 嬉しすぎて鼻の奥がツンとしてきちゃった。

 鼻から息を吸い込んで泣きそうなのをガマンすると、私は心からの笑顔を浮かべる。

「うん、ありがとう……おかげで私も心が決まったよ」

 目立つのはやっぱり苦手。
 どうしても小学五年生のときの歌唱大会のことを思い出しちゃうし、また歌えなくなるんじゃないかって怖い気持ちはある。

 でも、人前で歌えるようになることと一緒に目立つのも慣れていかなきゃならない。
 プロプレイヤーを目指す以上、大勢の前に立つことは多くなるんだから。
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