うた×バト〜思いは歌声にのせて〜
 人前では歌えない私だけれど、ここにいるのは雄翔くんだけだし。
 何より雄翔くんが眠っている状態でってことだから歌えるとは思うけど……。

「いいけど、どうして歌? うるさくない?」

 質問すると、雄翔くんはウトウトしながらも話してくれた。

「前、流歌と会った日は寝覚め良かったんだ。……この場所だからだと思ったけど、全然効果ないし……多分流歌の歌声のおかげだったんだ」
「私の歌の?」
「うん……だから、流歌の歌で目覚めたい」
「っ……」

 そんな風に言われたら断ることなんて出来ない。
 まあ、最初から断る気は無かったんだけど。

「分かった、良いよ」

 快く承諾すると、雄翔くんの顔がふわりとほころんだ。

「ありがとな」
「っ!」

 クールな見た目のカッコイイ雄翔くん。
 そんな彼のかわいい笑顔に心臓を撃ち抜かれた気分だった。

 そのまま眠ってしまった雄翔くんの寝顔を見ながら、私は早くなるばかりの鼓動をどうやって抑えればいいんだろうって悩んだ。
 ドキドキ鼓動が早い。顔が熱くなって、湯気が出ちゃうんじゃないかな?

「どうしよう……好きすぎる」

 思わず口に出しちゃって慌てて押さえる。
 でも雄翔くんは完全に眠っているのか、聞こえてなかったみたい。
 規則正しい寝息が聞こえてホッとする。

 でも、言葉にしてもっと自覚した。
 好き。
 私、雄翔くんが好き。

 この気持ち……ファンとか推しとか、そういうのじゃない。
 似ているけど、違う。
 言葉では説明できないけれど、どうしようもなく雄翔くんが好きなんだ。

 この日私は雄翔くんへの恋を自覚した。
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