うた×バト〜思いは歌声にのせて〜

俺のお姫様【雄翔side】

「あれだけ人気出たのって、たまたま声変りしていい声になったってだけだろ?」
「そうそう。あいつより歌上手いやつなんていっぱいいるもんな」

 誰か……事務所の先輩だったかな? そんなことを言ってたのは。

 ただの嫉妬だって分かってる。
 この業界は売れたもん勝ちってところがあるから、嫉妬されるのは仕方ないって。

 でも、俺自身周りの変化についていけなくて……。
 先輩たちの言葉がグサリと突き刺さった。

 声変り前の頃から《S-JIN》のメンバーとして頑張ってきた。
 声変り後の状態によってはメンバーから外れる可能性もあったって分かってる。
 だから、声変りが落ち着いた後社長に続行の太鼓判を押されたときは本当に嬉しかったんだ。

 でも、その後の周囲の反応は俺の予想を超えていて……。

 メンバー内の人気も前までは翼先輩がダントツで一番だったのに、すぐに俺と陽向が追い抜いた。
 今だって一番歌が上手いのは翼先輩なのに、声がいいってだけで人気が出たことがちょっとショックだった。

 人気が出て、ファンも増えて。
 いいことなんだけど、それに比例して不安も大きくなっていった。
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