うた×バト〜思いは歌声にのせて〜
 初めは寝ているときだけで、雄翔くんが起きて目が合ったらピタッと止めちゃってた。
 でも、雄翔くんは私の歌を心地よさそうに聞いてくれる。
 目が合ったら、ニコッと微笑んでくれる。

 だから、雄翔くんの前では歌うのが怖くなくなったの。

 苦手を少しだけでも克服出来て、私も自信につながった。
 この調子で、色んなことがいい方に向かえばいいなって思ったんだ。

 ……そんな都合のいいことばかり、ある訳ないのに。

***

 初めの一週間で新入生みんなのチームが決まった。
 メンバー変更の猶予期間として更に一週間が過ぎた頃、ついに本格的な《シング・バトル》の活動を始めることになったんだ。

 今日はとりあえずそれぞれの志望する役割別に集まって、ライバルとなる人たちとの顔合わせ。
 学園に通う仲間だけれど戦う相手でもある人たちとの顔合わせで、みんな何とも言えない緊張感を持っていた。

「さて、自己紹介をしてもらう前にこれからの予定を簡単に説明するぞ」

 放課後。
 第二会議室に集まったプレイヤー志望の子たちの前で、植木先生がハキハキと話す。
 植木先生はプレイヤー担当の先生でもあったみたい。
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