うた×バト〜思いは歌声にのせて〜

目指すもの

 雄翔くんが眠るのを手伝ったあの日から、ほぼ毎朝あの東屋で会うようになった。

 流石にひざ枕はしないけれど、雄翔くんが悪夢を見ないで済むように歌って起こすのが私の役目。
 あと、朝食のおにぎりを持って来るのもかな?

 聞いてみたら、雄翔くんはやっぱり朝ごはんを食べていなかったらしい。
 お昼は仮眠した後、ギリギリの時間に急いで食べていたとか。

 だから私は寮母さんに頼んで二人分のおにぎりを作って貰ったんだ。
 食堂でちゃんと用意してくれるのに申し訳ないなって思ったけど、構わないって笑顔で言ってもらえて安心した。

 そういうわけで、雄翔くんを歌で起こした後は二人で朝食のおにぎりを食べるの。
 この朝のひと時は、雄翔くんへの気持ちを自覚した私にとってとても嬉しい時間。

 教室でもなかなか話せない人気者の雄翔くんと、ここでだけは二人きりになれる。
 雄翔くんはほとんど寝ている状態だけれど、それでもひとりじめ出来るこの時間が私にはとても大切なものなんだ。

 それに、こうして起こすために歌っていたおかげかな?
 人前で歌えなかった私が、雄翔くんの前でなら歌えるようになったの。
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