うた×バト〜思いは歌声にのせて〜
「人前で歌うのが苦手? 《シング・バトル》のプロプレイヤーになればバトル以外でも歌う機会はたくさんあるのよ? まさかこの学園に通ってるのにアマチュアや趣味で終わる気でいるの⁉」
「っ⁉」

 違う! ちゃんとプロを目指してる!

 そう言いたくても言えなかった。
 長澤さんの言う通り、《シング・バトル》のプロプレイヤーは歌の仕事を受けることも多い。
 そうやってスポンサーを得たりするから、人前で歌えないっていうのはかなりの痛手だ。

 本気でプロを目指してないって思われても仕方がない。

 言い返せないでいると、長澤さんの目がますますつり上がる。
 威嚇する猫みたいな威力の睨みが怖くて、押し負けた。

「みんなプロを目指して本気で頑張ろうとしてるの! 遊び気分だとしたら、迷惑でしかないわ!」
「っ⁉」

 人気子役でもある長澤さんの意志の強さに圧倒されて言葉が出ない。
 小さい頃からそういう世界にいた長澤さんの言葉だからこそ、大きな岩となって私の心に圧し掛かる。

 私は、ちゃんとプロを目指してる。
 歌うのが大好きなのに、怖くて人前では歌えないから……。
 だから人の目を気にしないで済む《シング・バトル》のプロプレイヤーに絶対なりたいんだ!

 そんな強い気持ちはあるけれど、長澤さんの言葉はどれも正論で……。
 人前で歌えないのに、《シング・バトル》のプロプレイヤーとして本当にやっていけるのかって言われたら不安があることは確かで……。

 迷惑だと言われたら、私には返す言葉がない。
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