うた×バト〜思いは歌声にのせて〜
「おい、長澤。流石に言い過ぎ……」

 長澤さんの近くにいた横山くんも止めようとしてくれる。
 けれど、長澤さんのひと睨みで黙り込んじゃった。

 パンパンッ!

 そのとき、手を叩く音が大きく響く。

「そこまで! 長澤はちょっと言い過ぎだ。理由もあるんだろうから、そこまで非難するな」

 植木先生が見かねたように声を上げ、長澤さんを座るよううながした。
 そして視線を私に向ける。

「金井、自己紹介に歌えって言って悪かったな」

 申し訳なさそうに眉を下げた植木先生は、すぐに少し厳しめな目に変わる。

「でも実際人前で歌えないのはマイナスにしかならない。克服できるように頑張って欲しい」
「……はい」
「じゃあ座れ。自己紹介、次のやつから。……歌いたくないやつは無理に歌わなくていいからな」

 室内の空気が微妙な状態だったけれど、植木先生の指示でその後も自己紹介は続いた。
 私とは違って他のみんなは問題なく歌っている。

「一年B組の長澤絢です」

 長澤さんの自己紹介は、名乗った時点で自信に満ちていて人を惹きつける魅力があった。

 燦々(さんさん) 降り注ぐ光
 ジリジリ 焼き付く紫外線
 まるで キミに向ける 私のキモチ

 長澤さんの歌声は、その体全てにエネルギーを詰め込んでいるような力強いもの。
 それでいて遠くまで聞こえそうな良く通るキレイな高音。

 そんな彼女の歌を聞いて、私は更にみじめな気分になった。
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