ひねくれ令嬢の婚活事情
「そっか。じゃあ今度君と出かける時は、手土産に花束でも持っていくことにしようかな」
「…………今度?」
聞き捨てならない単語が耳に入り、オレリアは隣の男の顔を見上げた。
「クロードの誕生祭の舞踏会は君をエスコートするからね。ドレスを仕立てないといけないだろう?」
(ん………………?)
オレリアは耳を疑った。
マティアスからエスコートの申し出を受けたのは今が初めてだ。そして、承諾した覚えもない。オレリアは抗議の目をマティアスへ向けた。
「私、貴方と舞踏会に行く予定などありませんわ。先程のご令嬢でもお誘いくださいませ」
「じゃあ今、その予定を追加しておいて」
「結構です」
「僕は君としか行く気がないから却下」
「はぁ?」
横暴ともいえる台詞にオレリアの片眉が器用に跳ね上がった。
彼の執着の理由がわからない。王太子から頼まれたであろう、オレリアの噂の真偽は既に確かめた筈だ。これ以上オレリアに何の用があるというのか。
あの舞踏会の夜に話していた、オレリアを弄ぶというくだらない賭け事に、彼は会話に混ざっていただけだとも思っていたが、よもや大金でも賭けていたのだろうか。