ひねくれ令嬢の婚活事情

 しかし、一年前にオレリアを取り巻く状況は、父の愚かな行いにより一変した。

 オレリアの父は金に目がない大変な愚物であった。長年政務官から賄賂を受け取っていただけでなく、領民から徴収していた税の一部を国に納めず横領していたことが発覚した。 

 その愚行が世間の明るみに出た翌日、父は一切の責任から逃れるように、タウンハウスのバルコニーから身を投げ、自らその命を散らした。

 元より殆ど屋敷に帰って来ず、たまに帰ってきたかと思えば飲んだくれて怒鳴り散らしている父への尊敬の念など欠片もなかったが、賄賂と横領の理由が賭博による多額の借金だったことが判明した際は、これほどまでに愚かだったのかと改めて軽蔑した。

 悲しみに暮れる間もなくオレリアは、己に降りかかった不幸を嘆くばかりの母に代わり、爵位を継いだ叔父と共に債務整理に追われた。

 父が遺した借金は税収のみでは到底返済できず、先祖代々受け継がれてきた家財や宝飾品、そしてオレリアの豪奢なドレスまでもを売り捌くこととなり、スミュール家の評判は地に落ちたのだった。


 母は、侯爵夫人の座を叔母に明け渡さなければならなかったことを恥じて屋敷に引きこもっているが、オレリアはそうもいかない。

 いつまでも叔父夫婦が執り仕切る侯爵家に世話になるわけにもいかず、オレリアは結婚相手を速やかに探さなければならなかった。女一人では生きていくことすら難しい。

 だからこうして出会いを求めて舞踏会に出席したはいいものの、顔だけは良い持参金も当てにできない娘にまともな男が近付く筈もなかった。
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