ひねくれ令嬢の婚活事情

 幾許か時間が経った頃、盛大なファンファーレと共にクロードとその妹である王女リリアーヌが、パートナーを伴い入場してきた。音に釣られ入口に顔を向けたオレリアは、視界に入ったリリアーヌのパートナーに目を見張った。

 マティアスだった。

 それと同時に、彼の「事情」を瞬時に理解したものの、胸の内には苛立ちが湧き出てくる。

 (何が、君としか行く気がない、よ)

 マティアスはリリアーヌをエスコートし、ホールの中央へと向かって行く。リリアーヌを見つめる彼の目は慈しみに満ちている。それを受け、リリアーヌは頬を赤く染め、熱の篭った眼差しを彼だけに向けている。

 今年デビューしたばかりのリリアーヌは、あどけなさを残した可愛らしい顔立ちの持ち主で、長身で美形のマティアスが並び立つと一層その愛らしさが強調された。

 お似合いの二人だった。

 二人だけの世界がそこに構築されているような、甘やかな空気が二人の間に流れている気がした。

 オレリアは二人の様子から目が離せなかった。リリアーヌがマティアスのコートを小さく引っ張り、身を屈めた彼の耳に何かを囁く。二人は笑い合い、リリアーヌがぎゅっとマティアスの腕に抱きついている。
 
 やがてファーストダンスの音楽が流れ始め、クロードとエレーナ、リリアーヌとマティアスがそれぞれ踊り出す。身を寄せ合ってワルツを踊る様はまるで恋人同士だ。その様子を見てオレリアの胸がつきりと針で刺されたように痛んだ。
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