ひねくれ令嬢の婚活事情
 
「聞き逃してごめん。何か話したい事があるんだろう?」
「……そうなんですが。…………えっと………………」

 二人の間に沈黙が訪れる。
 オレリアは俯きがちに、言葉を選んでいる。彼女は素直に自分の考えを吐露することを苦手としている。決して長いとはいえない付き合いだが、マティアスはその点を理解していた。
 人によっては苛立ちが募るだろうが、マティアスは気が長い方だ。それに言いあぐねるオレリアの姿を観察するのは全く飽きない。しばしの間、その様子を眺めていると、ようやく決心がついたのかオレリアが口を開いた。

「…………あの……結婚の、話なのですが…………」

 あまり予想のしていなかった話題に、マティアスを目を瞬かせた。
 逃す気はなかったが、急いでもいなかった。徐々に外堀を埋めていけばいいと思っていただけに、オレリアから切り出されたことはマティアスに驚きをもたらした。
 よもや別れ話ではあるまい、と警戒していると、オレリアの耳の先が徐々に赤みを帯びていくのが分かった。
 ああ、これは――
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