ひねくれ令嬢の婚活事情
「最初の言葉は一応謝罪しておくよ。ある人から頼まれてね、君がどういう人間か見極めたかっただけだ。噂通り、君がエレーナ嬢に害なす存在だったら見過ごすわけにはいかないからね。まあ、正直なところ面倒だと思ってたけど、意外と楽しい時間が過ごせて良かったよ」
「それは良かったですわ」
オレリアは嫌味っぽく返した。事情があったらしいとはいえ、オレリアにとって不名誉な話題に混ざっていただけでなく、初対面でいきなり不躾なことを言われたせいで、この男にあまりいい印象はない。
「今、最高にムカついてるって顔してるね」
マティアスはにやにやと笑いながら、オレリアの顔を覗き込む。肯定しても否定をしても、揶揄われるに違いない。実際、胸の辺りがむかむかして仕方がない。オレリアはなけなしの愛想を捨て、黙りこむ。
そして、楽団が最後の一音を奏で終え、オレリア達もステップを繰り出す足を止めた。
マティアスはオレリアへの興味が失せたのか、一曲を踊り終えるとオレリアを叔母の元へ送り届けた。別れの挨拶と共に何かを期待するような視線を向けられ、えも言われぬ居心地の悪さを感じながら彼の背中を見送った。