ストーカー気質な彼女は,甘い溺愛に囚われる。
「……うん?」

「安いしって,ことは……」

「うん」

「オレの方が,いいん,ですか?」



一生懸命に見上げてくる顔。

前髪が横に流れて,その顔はよく見える。

よく考えもせず,頷いてしまった。

確認するように訊ねた陽深ちゃんは,俺の横からえいっとお金をいれて,ポチりと押してしまう。

ガタンと落ちてきたのは……バナナ·オレ。



「……え?」

「あの,これ,どうぞ……2回のお礼と,あと,この間騒がせちゃった分……です。時間,大丈夫でしたか……?」



両手で差し出され,自然と受け取った。

両手で深く掴んでいた陽深ちゃんの手にも振れてしまい,陽深ちゃんは肩を震わせる。

緊張しいの,恥ずかしがりやで照れ屋陽深ちゃん。

俺も



「大丈夫だったよ」



と自然に1つのボタンを押す。



「えっ」

「どうぞ。それとも,体育のあとだから,水の方が良かったかな。飲むのは後でもいいよ」

「ぁぁぁあの,大丈夫です! なんでも,嬉しいです……すみません」
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