あなたの世界にいた私






-コンコン





「雪乃ちゃん、おはよう。







今から、大事な話があるんだけどいいかな?」







朝起きて、
先生がどこか真剣な表情で尋ねてきた。







だから、私も、
先生の問いに頷いて答えた。










すると、
先生は手に持っていた紙を私の前に出した。

























「雪乃ちゃんの治験薬が出来た」




「…!?」






先生は私の目をまっすぐ見つめて、
それだけ言った。











初めは耳を疑った。

















何かの夢かと思った。












「だから、もう少し、頑張ってほしい」






そう言って、先生は微笑んだ。













その言葉を聞いた瞬間、
これは、お父さんとお母さんがくれた、
最後の贈り物だと思った。











まだ、消えていなかった、
小さな希望が胸の中で、
また大きく膨らんでいく。










「…先生…。














…私、頑張り…ます。












だから…よろしく…お願いします」










私がそう言うと、
先生がそっと私の頬に触れた。









そして、涙を拭った。











「一緒に、頑張ろう」





先生が言う、”一緒に”はとても心強かった。









そして、
次の日から、私の最後の治療が始まった。



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