あなたの世界にいた私
「…治験薬だから…
…まだ、治るかは分からないの」
「…うん」
雪斗くんもきっと分かってると思う。
でも、
少しの希望が見えて嬉しかったんだ。
私だって、こんなことが起きるなんて、
思っていなかったから。
「…これから先…
…私と同じような病気になった人の為に…
……パイオニアになるんだよ。
……すごいでしょ?」
「…うん、すごい。
…すごいよ、雪乃は」
「…でしょ…」
言葉では強がってても、
私は、弱い。
もっと強くありたかったけど、
無理だった。
雪斗くんが泣いてるからとか関係ない。
死ぬかもしれないという恐怖が、
今になって込み上げて、
怖くて怖くてたまらない。
その恐怖から、
涙を止めることができなかった。
雪斗くんの前だと、
いつも素直になれる。