あなたの世界にいた私







そして、月日はあっという間に過ぎていき、
雪斗くんのライブを明日に控えた今日。













ベッドから自分で起き上がることもでき、
鼻からのチューブも抜くことができていた。


















全てが順調だと思っていた。



















でも、この日は少し違った。














朝から胸に違和感を覚えた。



















何もしていないのに、
心臓がバクバクと音を立てていた。



















苦しいとか、

















痛いとかの症状はなく、




















ただ、心拍数が少し早く感じられた。













「……胸、苦しくない?」










聴診器を
当てながら聞いてくる先生に、頷いた。


























すると、先生は少し考えて言ったんだ。










「念の為、検査しよう。

















それから、検査結果が出るまでは、
治験薬はやめておこう」









「え、でも」











「確実に効果が効いてるのは、分かってるよ。











でも、今は、
雪乃ちゃんの身体の中で、
何が起きてるのかを知る必要がある。











だから、お願い」





先生が言うのだから、
これが、今は一番良い選択なのだと思う。













だから、私も頷いた。



















きっと、大丈夫だよね。











そう自分に言い聞かせて、
そっと胸に手を当てた。
















バクバクとしている心臓の原因はわからない。
















悪いことなのか、














薬による副作用なのか。














でも、私が生きていると言う証でもある。




















だから、大丈夫。 



















大丈夫。
















そう言って、何度も言い聞かせた。





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