あなたの世界にいた私
-コンコン
「失礼します」
お母さんが出て行ってすぐ、
優真先生が入ってきた。
「まだ吐き気する?」
そう言って、私のおでこにそっと手が触れた。その手がひんやり冷たくて気持ちよかった。
「もう、大丈夫」
私のおでこにあった手は、
すぐに離れてそのまま私の手首を掴んだ。
そして、特に異常がなく、
いつも通りだと言うんだ。
「うん、大丈夫そうだね」
脈を測っていたその手が、
またすぐ離れていく。
そして、点滴の方に視線を向け聞いた。
「何か食べたの?」
「……お母さんが持ってきてくれたリンゴ」
「美味しかった?」
「うん。…でも」
「ならよかった」
私が言おうとしていることがわかったのか、
先生は私の話を遮った。
「無理にとは言わないけど、これからちょっとでもいいから食べて。じゃないと、熱も下がらないから」
「………うん」
私が返事をすると、
満足そうに病室を出て行った。