Cherry Blossoms〜咲き誇った花の名は〜
桜士は走りながら拳を強く握り締め、唇も強く噛み締める。すると、桜士の心を見抜いたかのようにアルフレッドが言う。

「大丈夫、誰も死なないよ。一花と一緒に帰りたいから」

アルフレッドを見れば、彼は笑っていた。その顔は無邪気な笑顔ではなく少し緊張しているように見えたものの、桜士の心に染み付いた気持ちを解していく。

「そうですね」

桜士はそれだけを返すとまた前を向く。すると、「伏せろ!」とヨハンが叫んだ。全員がその場に伏せると、五人の頭があった場所をナイフが飛んで行く。桜士が後ろを見れば、いつの間にいたのか、キョンシーが立っていた。

「全然気配を感じなかったわ」

アルオチが息を吐き、早くなってしまった呼吸を落ち着かせながら言う。桜士も、全く気配を感じなかったことに驚きと苛立ちを隠せなかった。

(公安警察・九条桜士、しっかりしろ!ヨハン先生がいなかったら俺たちは今頃……)

バタバタと足音が聞こえ、桜士たちは前を向く。Cerberusの下っ端が武器を持ち、桜士たちの行く手を塞いでいた。その数はパッと見ただけでも二十人ほどいそうである。
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