命令教室

☆☆☆

香が死んだ。
そんなのは嘘だ。
これは悪い夢に決まっている。
私はふらふらと教室へ向かって階段を降りていた。

ともすれば足を滑らせてそのまま落ちてしまいそうになる。
その度に後ろからついてきていた充が「危ない!」と、声をかける。
どうにか教室へ戻るとそこにはすすり泣く未来と純子の姿があった。
私を見つけて修が駆け寄ってくるが、その顔は青ざめている


「今……」


そう言って口を閉ざしてしまった。
香が立っていたのはこの教室の真上辺りだった。
だからきっと、落ちてくる様子が窓から見えてしまったんだろう。

私はふらふらと足をもつれさせながら窓辺へ近づいて行った。
そして下を見下ろしてみるが、そこにはなにもない。
落ちたはずの香はどこにもいなかった。
そしてホワイトボードには『誰かを自殺させる日 成功』と、書かれていたのだった……。
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