命令教室
そして弾き返される。
それでもまた走る。
次の衝撃で充の右肩が床にぶつかり、嫌な音が聞こえてきた。


「ぐっ……」


充が右肩を抑えながら無理やり立ち上がる。
額には脂汗が浮かんできていて、痛みに顔が歪んでいる。
今の衝撃で肩の骨が折れてしまったのかもしれない。


「もうやめろ!」


正志が叫ぶ。
けれど充はまた走りだした。
大きな声を上げて走り、見えないなにかに弾き返される直前、その姿がふっと空間から消えていた。

充の足音も、絶叫も、息遣いも、すべてのものが喪失する。
開け放たれた入り口のドアから風が吹き込んできて、私達をあざ笑うように体にまとわりついてきたのだった。
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