命令教室
私はようやく両手をゆるゆると下ろして教室内を見回した。
先生はついさっきまで確実にホワイトボードの前にいた。
それが今どこにもいなくなっているのだ。


「もしかしてマジックじゃねぇの?」


そう言ったのは充だ。


「ほら、人間が急に消えるやつ」


そう言えば先生は簡単なマジックを練習したことがあると言っていたっけ。
実際に学校の休憩時間にトランプマジックを見せてもらったこともある。
プロのマジシャンとまではいかなくても、結構上手だったはずだ。


「人体が消えるなんて、めっちゃ大掛かりなマジックだよ?」


純子は眉を寄せている。
確かに、床に抜け道があったり後ろの壁がドアになっていたりするのが、人体マジックのタネだ。
この施設にそんな大掛かりなものがあるとは思えない。


「よっし! タネを探そうぜ!」


正志はそう言うと勢いよく立ち上がったのだった。
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