その涙が、やさしい雨に変わるまで
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転落事故の救護からはじまって、その後の会社業務復帰まで、美沙希は瑞樹の要望に応じて支え続けた。
社に戻ってからは、三琴が美沙希の代わりとなってサポートする。瑞樹はスケジュール管理だけでなく鎮痛剤の管理も、三琴にお願いした。
退院までの間に、瑞樹は三琴についての記録のすべてに目を通した。そして、どれだけ彼女が献身的な秘書であるのかを知る。部長、本部長、副社長と昇格するに際に、必ず彼女を秘書に指名していた。このことから、自分は彼女に多大なる信頼を寄せていたのかは明らかだ。
そして、三琴についての記憶が少しずつ戻ってきた。業務内容や社内行事に三琴が深く関与したものがあれば、それとセットとなって、彼女の姿がみえたのだ。「ああ、このときはそうだった」という具合に。
社のこととセットすることで、瑞樹は細かいところまで三琴を思い出すことができるようになった。
オンでは秘書の三琴に、オフでは婚約者の美沙希に支えられて、事故から一年がすぎた。頭痛のことが少々厄介ではあるが、ほぼ事故前の生活に戻ったと思われた。
だから、三琴から「辞めたい」といわれたとき、瑞樹の受けた衝撃は小さくなかった。