ようこそ、むし屋へ    ~深山ほたるの初恋物語編~

ぼっちな受験勉強

「中三は、光陰矢の如しだぞ」
 進級式の日に担任の先生が言っていたとおり、あっという間に二学期になった。

 春のクラス分けでほたるは四組となり、とうとう1組神話が崩れたと、ももちゃんに酷く残念がられた。
 その1組がももちゃん、2組が篤とさなえちゃん、3組が紗良。
 篤と一緒じゃなかったのはショックだったけれど、紗良とクラスが別でよかったとも思った。

 中三は、全ての学校行事に「中学最後の」がくっつく。
 みんな「最後だから」と、真剣に取り組む。そうやって細かな行事に精を出していると、時間は超スピードで過ぎていく。
 二学期には中学最後の文化祭も終わり、部活も終わって、あとは受験まっしぐら。
 だから恋愛どころではない。とは、ならないのが思春期。

 部活を引退すると時間が生まれる。すると、カップル率が急上昇。放課後の図書室や教室は、まるで男女ひと組がルールみたいに仲良く参考書を開くカップルばかり。

 放課後、さなえちゃんは塾だし、ももちゃんは同じクラスにフルーツ部のメンバーがいるため1組で勉強している。ほたるも誘われたけれど別のクラスはなんとなく居づらい。
 だからと言って一人でカップルたちに混ざって勉強する勇気もない。
 けれど、家に帰れば「塾に通いなさい」とほたるの母がうるさくて。

 だから放課後は、近くの図書館で時間を潰してから帰宅することにした。
 受験勉強しなきゃと思いつつ、結局小説に手が出て困ると思いながら『せつない恋。中学編』を窓辺の自習机で読みふける。広げた数学の問題集はまっさらだ。

(篤と紗良は、図書室で一緒に勉強してるのかな)
 小説に引きずられて妄想が暴走してたら「あの、すみません」と呼びかけられた。

 振り向いたほたるは「あっ」と思わず叫んでしまった。
 その口元を慌てて抑えて「声でかい」と篤が焦っている。

「外でブレイクしようぜ」と、篤はコンビニ袋を掲げて笑った。
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