酸っぱい葡萄を甘くする
もし、あの約束が本当なら
彼が今日来るとか言っていた。

約束の時間は過ぎているし、外は大雨。

さすがに来てないだろうと思い、SNSを開く。

天音のアイコンに赤字で1と記されていた。

アイコンがあるということは夢ではなかったようだった。いや、夢であれ。

『おはようございます。天音です。
ドアノブに袋かけておきます』

犬がお辞儀しているようなスタンプが追加で押された。

投稿時間は今から1時間前。

朝早くに来てくれたようだ。

昨日、部屋まで送る(断る気力もなかったし、足も痛かったし)ことになった時、
しっかり部屋番号まで覚えて帰ったみたい。

ちょっと気を許しすぎたかもしれない、
あのときの自分は判断能力が落ちていたから仕方ないのか、なんてまた反省する。

言い訳をするならば
私の住む少し古いマンションのエレベーターだからか、ちょっと狭い作りになっている。

もし、彼が本当の意味でオオカミなら、そこで私は刺されるかなにか酷い目にあっていたかもしれない。(すでに酷い目には合わされているが)

でも彼は私の荷物を持ち続けるのはもちろん、「足痛いっすよね。俺、体力あるし、おんぶしますよ」と私の前にしゃがみ込んだり、
「あっ、やっぱ女友達呼びましょか?」とツテを全力で使おうとしたりと

なんというか、素直すぎるいい人っぽい言動
が多いから、私に一時的に着いてくることを許してしまったのだ。

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