溺愛されては困るのです ~伯爵令嬢、麗華の憂鬱~
 今度は薔薇の柄の着物でも贈ってみようかと思う。鮮やかな紅の着物はさぞかし彼女に似合うだろう。

「お前、もしかして」
「ん?」

 悦巳が目を細めて意味深に見つめる。

「おとといの舞踏会で麗華さんがどんなドレスを着ていたか覚えているか?」

「ああ。青くて内側は純白のレースだったな」

 華奢な鎖骨に大ぶりのルビーのネックレスが輝いていた。

「じゃあ小百合さんのドレスは?」

「うーん。確か薄いピンクか? いや赤ワインが目立ったんだから、白だ」

 左右に首を振る悦巳は「小百合さんはクリーム色のドレスだよ」と言う。

「ふぅん。で? それがどうした?」

「麗華さんを注意はしないのか? 明らかに小百合さんに嫌がらせをしているときがあるだろ?」

 流星は表情を曇らせた。

「人前で言えば、彼女のプライドを傷つける。いずれちゃんと話を聞いてみるつもりだが、今はなかなか機会がない」

 彼女の言い分を聞いてみたいと思っていたが、ついさっきの感じだと彼女は自分を恥じている。

『どうして私なんか、かまうんですか』
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