私、修道女になりたいのですが。。。 ー 悪役令嬢のささやかな野望？

　もうすぐ斬首刑にされるかもしれないから怖いなんて――。
　アレックス様の視線を感じる。
　なんて言われるかドキドキしていたら、彼は私の額にチュッと口づけた。
「あまり夜ふかしはするな。それと、なにか不安なことがあれば相談に乗る」
「アレックス様……」
　ハッとして彼の顔を見ると、とても優しい目で私を見ている。
　その目を見たら、彼に全てを打ち明けたくなった。
「ほら、ボーッとしてると、遅刻するぞ」
　彼が廊下の前にある時計を指差したので、コクッと頷いた。
「はい、そうですね」
　彼の部屋の前で別れると、馬車に乗って学園へ――。
「すっかりこの生活に馴染みましたね」
　私の向かい側の席に座っているグレースがしみじみと言う。
　実は私が城で静養することが決まってから、アレックス様が気を利かせてグレースを呼んでくれたのだ。
「そうね。慣れって怖い」
　周囲が親切にしてくれるせいか城での生活に慣れたし、学園でも友達ができた。
　でも、アレックス様といる時はドキドキが止まらない。
　普通に話はできるようになったけれど、ふたりきりになるとどうしても彼を意識してしまう。
　それは彼にキスされたからだろう。
　アニメの世界で憧れていた人にキスされるなんて……もう私の妄想の世界なんですけど。もしかしたら私はまだ夢を見ているのかもしれない。
　だって、孤児院で会ってからというもの、アレックス様が私に親切にしてくれる。
今はその夢から覚めるのが怖いのだ。
「もうこのままお嫁に行かれても大丈夫ですね」
　グレースのその言葉にゴホッゴホッとむせた。
「へ、変なこと言わないで。全然大丈夫ではないわ」
　人生のほとんどを庶民として生活してきたのだ。皇太子と結婚なんてできるわけがない。それに、私は斬首刑になる。
　もうすぐ婚約の儀。
　家出の計画も城での静養が決まって頓挫しているし、このままギロチン台行きなのだろうか。