来世なんていらない
私は小高くんのおはようにもバイバイにも、絶対に返事をしなかった。

一度だけ、バイバイって手を振る小高くんに、小さく手を振り返してみたことがある。

どうかしていた。

案の定、教室の前のドアから出ようとする私に、ドアの傍に立っていた女子が「調子乗んな、ブス」って言って足を引っ掛けた。

廊下に向かって派手に転んだ私を、誰も助けなかったし、足を掛けた女子は賞賛された。

小高くんが慌てて駆け寄って来たけれど、
「だいじょうぶ!?」って差し出された手を強くはたいて、私は一心不乱に走った。

擦りむいた膝がズキズキと痛んだ。

それ以来、小高くんの挨拶には無視をキメ込んでいる。

カンジ悪い女だって、早く諦めてくれ。
あなたが苦手なんだって、迷惑なんだって早く気付いてくれ。

あなたのせいで私はどんどん嫌われていく。
なんにもしていないのに。

クラスに馴染めない出来損ないの自分を、小高くんのせいにすれば少し気持ちが晴れた…。
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