来世なんていらない
私に人一人を守り抜ける力があるって思ったわけじゃない。
また壁にぶつかって傷付けあって、数え切れないくらいの後悔を繰り返すかもしれない。

それでも真翔と一緒に生きていけるならそんなことは怖くない。
失敗したっていい。
生きてて良かった、明日も生きたいって、この人となら本気でそうやって暮らしていけるって信じられるから。

「ゆっくりでいいよ。二人でゆっくり、正しくなろう」

鼻をすすって、涙を拭いた真翔が私の前髪に触れた。

「まつり…また前髪伸びてきた…」

あんなに泣いたから鼻声。
子どもみたいだ。

「…見えてるの?近いから?」

「まつりが入ってきた時から見えてる」

「さっきコンタクトしてないって言ったじゃん!」

「コンタクトしてるかって訊かれて…なんか一瞬冷静に…なっちゃって。死にに来たくせになんでコンタクトなんてしっかりしてんだろって…ごめん」

「もー!もう…力抜けちゃった」

真翔がちょっとしゃくり上げながら、「好きだよ」って言った。

「私も」

「好きだよ。俺と一緒に生きてください」

「はい」

「大好き。ずっと、大好き」

「もう分かったからー!」
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