来世なんていらない
生きていく
十一月中旬。

私と真翔は五月に遠足で来た公園の、丘の上の展望台に二人で行った。

寒かった。
遠足の時とは景色が全然違っていた。

遊歩道に立ち並ぶ木々が黄色くなっていて、
木漏れ日がキラキラしているけれど、あともう少ししたらあの葉も散って、光が少なくなる。

風が冷たかった。
真翔がくれたパーカーはやっぱりちょっと大きい。

「生活には慣れた?」

「うん。だいぶ」

十一月になって、私とママはアパートを出た。
今は祖父母の家で四人で暮らしている。

おじいちゃんは”激怒“って文字を体現するかのように怒って、ママを何日も叱り続けた。

人が変わったように小さくなるママと、血圧が上昇し続けるおじいちゃんを見兼ねたおばあちゃんが何とか宥めてどうにか落ち着いた。

代わりにおじいちゃんは私を抱き締めてわんわん泣いた。
泣き方はママにそっくりだった。

住んでいた市営アパートから祖父母の家はバスで三十分くらい。
その時間分、学校も遠くなるけどそれもバスで余裕で通えるし、ずっとバス通学をしているリコとお揃いだなんて思った。

ママはメンタルクリニックと職業訓練校に通い始めた。

週五の訓練校に、月三回の通院。
休みの日にはおばあちゃんに料理を教わっている。
ママの部屋はあんまり散らからなくなった。

毎日忙しそうだったけど、ママの笑い声を簡単に思い出せるくらいには、明るくなった。
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