来世なんていらない
「真翔と初めてここに登った時、真翔がね、私のリスカの痕を見て、“死にたいの?”って訊いたの」

「憶えてる」

「こんなことしても死ねるなんて思ってなかったけど、本当は死にたかった。生きてる理由が一個も無かったから」

「うん」

「でも真翔は言ってくれた。私に絆創膏を貼ってくれて、九条さんは悪くないって。こんなことをさせる原因が悪いんだから、九条さんは悪くないって」

「そうだよ。まつりは悪くない」

「あぁ、この人が好きだって思った。なんて眩しい生き物なんだろうって思った。でもね、真翔にも本当は闇があって、苦しみながら生きてきた。だから私のことが分かったんだね」

「俺とまつりは多分ずっと似てたんだ。消せない後悔とか苦しさになんとか折り合いをつけてどうにか生きてきた。そうするしか無かったから」

風が吹いて、出会った時より伸びた真翔の髪の毛を揺らした。
私の前髪はこの前、短くなったばっかりだった。
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